今年の初旬から取り掛かっていた京都のエステサロンが8月に無事にオープンいたしました。
この記事では現地調査から竣工までの店舗デザインの流れと内装工事の内容をまとめております。
これからエステサロンを開業する方や改装する方は是非参考にして下さい。
現地調査
今回工事する商業ビルは、阪急河原町駅から地下で直結しており、アクセスが良く京都市の中心部にあります。地上8階建てのテナントビルで、築年数も浅く、外観・内装共に大変綺麗なビルです。ただ都市部という事で、資材の搬入時間が決まっているのと、日中は他のテナント様に工事の騒音がご迷惑かかるので、夜間工事になります。工事する区画は3階で200㎡(60坪)で、長方形や正方形の様な四角ではなく、歪な形状をしています。エステサロンは他の業態に比べ、特に個室と通路が多いので、歪な形状だとデットスペースが生じやすくなります。この与えられた条件(デメリット)を如何に上手く利用し、店舗デザイン・設計するかがデザイナーの腕の見せ所となりそうです。無論デザインも大切ですが、それと同様に、お客様やスタッフの方が利用しやすい動線やお店作りも大切になります。あと電気や空調、換気の設備面は特に問題ありませんでしたが、テナント内に排水管が1箇所しかなく、トイレをはじめ、シャワーユニットや手洗いなど、水廻り設備をひとエリアに集約する必要があります。ここをプランニングでどうクリアするかが重要になりそうです。
ゾーニング
現地調査した情報とオーナー様の要望をもとに、まずはゾーニングをおこないます。ゾーニングとは広さや設備等の状況を考慮し、空間の位置構成を決める作業です。今回は排水設備の位置が1箇所と決まっているので、シャワーユニットやトイレなどの水廻りの位置が最初に決まってしまいます。またビルの共用部からのテナントへの出入り口は2箇所になり、一方(左側)はエスカレーターから上がってすぐの出入り口、もう一方(右側)はエレベーター上がってすぐの出入り口になります。このビルのエレベーターは地下の駅と直結しているということもあり、お店のメインのエントランスは右側(エレベーター上がってすぐ)にしました。もう一方(左側)はスタッフ専用の出入り口とします。そうすると自ずと空間構成が決まってくるので、あとはいかにオーナー様の要望通りのスペック(部屋数・シャワー等の設備の台数)を確保すると共に、無駄のない部屋構成と利用されるお客様とスタッフの方が利用しやすい環境にできるかが重要になってきます。ここからは平面図の作業になります。
平面図・プランニング
こちらがゾーニング内容を基に作成した平面図です。コストの面や使い勝手を考え、床上げスペースを可能な限り少なくしたいので、水廻り(シャワーユニット・トイレ・手洗・ミニキッチン・洗濯パン)は中央より上部に配置し、それと隣接する施術スペースを中央部に配置しました。そうすることで、通路でくるりと迂回できる島形状しております。迂回できることでスタッフルームから各施術室にアクセスでき作業効率が上がります。またエントランスから、フェイシャル利用のお客様と、ボディ利用のお客様とでは、動線が違うので混雑することもなく利用しやすい環境となっております。どうしても形状が歪で、施術スペースとしては利用しづらいスペースも、収納庫にすることで無駄を無くしております。また、スタッフルームにも共用部での出入り口があるため、お客様を顔を合わさずにお店の出入りが可能となります。オーナー様から要望いただいてた、スペック(部屋数・シャワー等の設備の台数)もクリアできました。ここからは詳細な仕様の決定やデザインの落とし込み作業になります。
着工・現場打ち合わせ
着工前に現場でビルのオーナー様とビルの管理会社と弊社で、現場打ち合わせがありました。今回は解体工事がビルの管理会社で行われるため、その最終確認です。解体工事がビル側でされる場合、必要な物が撤去されていたり、不必要な物が撤去されていなかったり、トラブルになる場合が非常に多いです。弊社は必ずオーナー様立会のもと、ビル側(解体業者)と現場で必要な物と不必要な物を確認しながら打ち合わせをし、トラブルを未然に防ぐようにしております。今回の解体で撤去していただいた内容は、壁と天井と床、エアコンと換気設備(ダクトは残し)、照明器具や感知器、給水や排水の配管と給湯器です。ほぼスケルトン状態で、給換気のダクトのみ残してもらいました。解体費用だけでも100万以上、ダクト工事費用だけでも数十万以上かかるので、その分コスト減になります。もしこの費用がオーナー様持ちになるだけで坪単価が2~3万円ほど上がることになります。もしエアコン設備が再利用可能であれば坪単価はさらに5万円程安くなります。そう考えると、坪単価は大まかな目安だけであり、実際は借りるテナントの状況により、かなり変動することになります。資金調達の計算で面積×坪単価で計算される方が多いですが、実際の物件により変動幅が大きい事を必ず頭に入れておいて下さい。勿論、工事業者に見積り後に資金計画をするのがベストです。
電気・空調・給排水の設備工事
着工後の墨出しも終わり、まずは設備の仕込作業に入ります。仕込作業は、給排水工事・空調工事・換気工事・電気工事・消防設備工事になります。まず、給排水工事ではビルで指定された排水ポイントから、シャワーユニットやトイレまで勾配を取りながら排水管を引き込む作業になります。それに伴い、給水の引き込みも必要になります。床上部分の下を給水と排水管が通ることになり、水廻りの位置次第で床上面積が大きく左右さます。使い勝手を考え、可能な限り床上部分は少なくしたいので、そういった面を考慮しながらのプランニングが大切になります。今回エアコンは、天カセタイプとビルトインタイプの2種類を併用しました。スタッフルーム等、まとまった広い空間には天カセタイプ、施術部屋など、小規模な空間には、吹出口が複数設けれるビルトインタイプにしております。一部の換気設備ダクトは、前の店舗の再利用可能でしたので、工期も短く、コストも安くすみました。機械式の排煙口やスプリンクラー等の消防設備は、ビル側の業者での工事になります。一般的にいう、B工事といわれるもので、ビル側の指定業者での施工になり、費用は物件を借りるオーナー様負担になります。
防水工事
今回はオーナー様の要望もあり、床上した水廻りの区画の一部に防水工事をしました。万が一何らかのトラブルで設備機器から漏水した場合でも、下の階に水漏れ被害が及ばないよう回避する工事です。通常の工事でここまでする事はあまりありませんが、下のフロアに金融機関や高額な商品を取り扱う店舗が入られてる場合に施工することがあります。防水工事をする箇所は、シャワーユニット・電気温水器、トイレ、ランドリールームの計3箇所になります。防水工事の内容は、各区画の床下にコンプリートブロックを立ち上げ、プールのような形状を作成し、そこにアスファルト防水を施します。万が一シャワーユニットや洗濯パンから水漏れしても、アスファルト防水された受けに溜まり、別の排水管から排水される仕組みになっています。これをしておけば、漏水が床のスラブをつたいクラックや隙間から下の階に水漏れする心配もなくなります。床下の防水工事は通常よりコストがかかるのですが、もし予算が許すのでればやるべき工事だと思います。
軽鉄・ボード・間仕切・床上工事
設備の仕込も終わるころになると、床上・天井・間仕切工事に入ります。下地はには軽量鉄骨(LGS)を使っており、その上に石膏ボードが貼られます。床はプラ束にパーティクルボード+コンパネ下地になります。基本的には、この間仕切の骨組みが出来上がるまでに、設備の仕込を終わらせないといけません。普段は見えませんが、壁や天井の中には様々な配管や電気のケーブル等が縦横無尽に張り巡らされております。壁床天井を塞いでからでは用意に変更できないので、この段階までに水廻り設備は無論のこと、コンセントや照明器具の位置も決定しておかなければなりません。床天井間仕切りが出来上がってくると、ようやく全体的な空間構成が感じられるようになり、お店の全体像が把握できるようになります。
仕上工事
仕上工事の施工途中の写真がなく、ほぼ出来上がりの写真になります。今回は京都ということもあり、淡いメイプルのナチュラルカラーの木目をメインに差し色で紅色とモスグリーン、そして和柄の幾何学模様を連想させる淡い輸入クロスを使用しました。いつも使っている輸入クロスは、国内のクロスに比べ非常に薄く、下地(石膏ボードの継ぎやビス跡)を拾いやすく施工が大変難しいですが、弊社では輸入クロスに特化した職人が施工するため、オーナー様も大変喜んでいただける仕上がりが可能です。また単調なデザインの通路とならないよう、通路壁面には木目のクロスを斜め貼りし、各部屋の扉には案内表示板でホテルの一室のような雰囲気へと演出しております。それに加え、通路をぐるりと囲むよな差し色のラインが施され、通路にも遊び心を入れ飽きのこない空間となるよう心がけております。エントランスには、重厚感を演出するため、京都の石畳を思わせる少し暗めのタイルを使用しております。受付後部には、スタッフルームと収納庫のドアが2箇所ありますが、壁面と同じ斜め貼りのパネルを取り付けることで、壁面と一体化し、目立たせないよう配慮をしております。また、受付カウンターの全面下部に下駄箱を設けることで、無駄なスペースを有効活用し、エントランスを広く見せる工夫をしております。店舗設計や店舗デザインで常に考えていることは、遊び心があり、ちょこっと感動でき意味があるデザインを心がけております。これはtricoの名前に由来でもあります。またそれと同時に、来店されるお客様やお店で働かれるスタッフの方にとっても、使い勝手がよく居心地がいい空間であるよう、様々な観点から考えております。
まとめ
最初のご依頼から竣工まで半年経ち、ようやく完成しました。今回はエステ店でも規模が大きく、また都心部の商業ビルということもあり、様々な規制がありましたが、オーナー様にも大変喜んでいただき、ひと安心しました。そして都心部で搬入時間も限られる中での工事でしたが、携わっていただいた工事業者の方全てに感謝申し上げます。当たり前ですが、お店の内装工事は一人でできる物ではなく、多くのスペシャリストが集い、協力し、同じ方向を見ながら一つの完成へと進めていきます。そのオーナー様やスタッフの方の思いや気持ちをお店という形ににする設計士である以上、このことを忘れず今後も店舗デザインに励んていきたいと思います。
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