開業したのち、売上や運営が軌道に乗ってきたら考えたいのが2店舗目の出店です。2店舗目は1店舗目で得たノウハウを活かしながら、準備や工事を進められることと思いますが、1店舗目の営業と並行しての作業は大変なことです。そんな多店舗を展開する際、力強いパートナーとなるのが、店舗内装における「設計マニュアル」です。設計マニュアルが果たす役割とその作成手順をご紹介します。
- 設計マニュアルとは
- 設計マニュアル作成5大ポイント
- 設計マニュアルの作成手順
- まとめ
・ブランド力
・品質保持
・作業の効率化
・コスト管理
・コストカット
・内容の整理・選定
・設計料の見積り依頼持
・設計業者の選定
・内容の決定版
1. 設計マニュアルとは
店舗内装における「設計マニュアル」とは、レギュレーションや設計指南書、標準デザインと呼ばれることもあります。内容に法的な基準はなく、自店が次に取り掛かる店舗の設計や内装工事をスムーズに進めるための指示書のことをさします。様々な要素をルール化し、手順書として取りまとめます。1店舗目から引き継ぐ内装デザインには素材やカラー、レイアウトなどがありますし、お店の顔となるロゴなどの取り扱い方を決めておくのもいいでしょう。運営に関わる人や作業する人が見て分かるようにまとめることはもちろんですが、余計なところまでルール化する必要はありません。ポイントをおさえたマニュアルになるよう、自店に必要なものを整理してみましょう。線引きやまとめ方が分からない場合は専門家に相談するのもいいでしょう。
2. 設計マニュアル作成5大ポイント
設計マニュアルが果たす5つの大きな役割についてご紹介します。設計や工事以外のメリットにも注目です。
ブランド力
店舗の内装デザインは、それぞれのお店のこだわりが一番表現されるところです。そこには単なるこだわりではなく、自店のコンセプトに基づいたデザインがなされているはずです。それらのデザインを今後展開する店舗にも統一していくことで、お客さまに認知され、ブランドとして確立することができます。ロゴマークなどは視覚的に訴える強い力があります。某コーヒーショップではこのブランド力を使って、チラシなどの宣伝広告に頼らずして、沢山の集客を得ています。サービスや商品に愛着を持ってもらうことも、他社との差別化につながります。多店舗ならではのブランドを意識した運営を行ってみましょう。
品質保持
多店舗運営を行う場合、店舗の統一感は重要なポイントです。しかしエリアの問題であったり、様々な理由から全ての店舗を同じ設計業者に依頼出来ないことも考えられます。設計業者が変われば、どうしても仕上がりに差が出てしまいます。そのような時にも設計マニュアルを準備しておけば、異なる業者に依頼しても同等のクオリティで設計することが可能になります。
作業の効率化
設計マニュアルの存在によって、設計や工事がスムーズに進められることはもちろんですが、難航する物件選びの際にも効果を発揮します。店舗内の客席のレイアウトや設備の配置が予想されていることで、物件の候補がグッと絞り込まれます。物件の候補の数が少ないと少し物足りなさを感じたりするかもしれませんが、設計に頭を悩ますような難しい物件を選ぶことがなくなるので無駄な時間をなくせます。また、どの店舗においても大きな差がなく、平均したコストで工事を進めることができます。
コスト管理
設計マニュアルからおおよそのコストが割り出せます。素材や什器、備品などは1店舗目と同じものを発注するので、基本的に価格の変動もありませんし、複数店舗分をまとめて発注すれば、さらにコストを抑えることができる場合もあります。
コストカット
始めての店舗の設計では、ああでもない、こうでもないと思い通りに進まないことも多かったと思いますが、次に取り掛かる店にはその手間を少しでも軽くしたいものです。それを実現するのも設計マニュアルです。客席のレイアウトや設備の配置、店内サインの扱い方など内装の仕様を取りまとめることで、工事にかかる時間の短縮をはかれます。打合せなどが簡略化できるので、設計料などのコスト削減にもつながります。
3. 設計マニュアルの作成手順
ここでは設計マニュアルの作り方をご紹介します。内容については法的な制限もありませんので、自店に最適なマニュアルになるよう進めていきましょう。
内容の整理・選定
まずは設計マニュアルの作成目的やねらい、用途を明確にしてから作業に取り掛かります。ルールがない分、何をどうマニュアル化するのかをはっきりさせておかないと、1から100まで詰め込んでしまっては内容が複雑になり、ページ数も増え、使い勝手の悪いものになってしまいます。いつ、どこで、誰が、どのように、使うのか整理しましょう。内容がまとまってきたら、同時に全体像も構築しておきます。実店舗を例に挙げて作成するのか、擬似店舗を作り例に挙げ、ある程度平均的な視点から展開させていくのかなど、掘り下げ方も様々ですので自店にあった方法を見つけましょう。
設計料の見積り依頼
内容の整理、選定の次は、設計料の見積り依頼を行います。成果物としてこれまでの店舗と今後考えられるプランをいくつか提示し、このような場合はいくらというように案件ごとの算出をしてもらいます。0からの店舗設計のデザインとは違って、坪単価や施工金額の何割などというような見積り方はできませんので注意しましょう。また、プランの修正を繰り返すと追加料金が発生する場合もあるので、内容は事前に精査してから依頼するようにしておきましょう。
設計業者の選定
設計マニュアルは今後の運営とともに、末永く使い続けていくものになります。パートナーとなる設計業者とも長い付き合いになることが想定されますから、慎重に選ぶ必要があります。これまでにお付き合いのある業者の他、コンペ形式で複数の業者の中から選ぶのもいいでしょう。多店舗経営の設計経験のある業者であることもポイントです。検討してみましょう。
内容の決定
設計業者の選定が終わったら、どんどん内容を詰めていきましょう。複数のパターンを微調整しながら決定していきます。また、使用する資材の大量発注等でコスト削減が可能になる場合もありますので、想定しておくといいでしょう。内容は多岐に渡りますし、詰めの作業はいくら時間があっても足りません。達成基準を定めてスケジューリングをしましょう。
4. まとめ
世の中にはたくさんのマニュアルが存在します。何度も口で説明する手間を省けるうえに、いつでも個別に見返すことのできる便利なツールです。そうやって大手チェーン店等はマニュアルを上手く活用し、どのような条件下でもほとんど人の力を使わずに多店舗経営を展開しています。しかし、初めから完璧なマニュアルがあるわけではありません。多くの店舗を取りまとめるのは容易ではなく、その都度起こる問題をクリアしながら、マニュアルを修正し、改善していったのです。店舗の大小に関係なく、皆さんにも同じことが起こるでしょう。完璧に仕上げたと思っても、マニュアル通りにいかないのが現実です。店舗が増えるごとに見直し、より良いものになるよう手を加えていきましょう。