開業を始める最初の第一歩が物件交渉です。正しい知識と誠意を持って、不動産業者との交渉に進みましょう。少しでも安く契約したいのは当たり前のことですが、あまり無理な条件を提示したりしてはうまくいく交渉もいかなくなってしまいます。お互いにスマートな交渉ができるよう、契約時に役立つ交渉ノウハウをご紹介します。
交渉の心構え
交渉とは、賃料や契約条件がまとまれば契約をするという大前提で行うものです。貸主が交渉に応じるのは、貸すことが大前提にあるからです。申込みだけを済ませ、交渉を繰り返す等の冷やかし行為は、貸主や不動産業者との信頼関係の破綻にとどまらず、他社での今後の契約も困難になるのでやめましょう。契約前に仲介役の不動産業者に希望条件を伝えておく事も、スマートな交渉術の一つです。
賃料の交渉
個人向け賃貸の家賃であれば、近隣物件と比較して値切り交渉も可能かもしれませんが、店舗物件では意味がありません。同じエリアで同じ広さでも設備や用途が大きく異なるため、事業計画書が重要になってきます。事業計画書を基に「賃料をあと◯%抑える事ができたら経営が安定する」等、具体的な交渉を持ち掛けてみましょう。しっかりした事業計画書があれば、貸主へもアピールでき、信用を取り付ける事ができるでしょう。賃料は、信頼の有無で左右される事がほとんどです。
家賃自体を下げる事ができない場合は、フリーレントと言って「一定期間の賃料を無料で借りる」交渉術もあります。工事期間やオープン前の準備期間の賃料をタダにできれば、売上のない期間の賃料の支払いを回避でき、運転資金の節約につながる大きなメリットとなります。
設備の交渉
賃料の交渉は無理でも、設備関係ならば交渉に応じてくれる貸主も少なくありません。内装や内部の設備は借りる側が負担するのが一般的ですが、今後その物件の価値が上がるような改装であれば、改修費や修繕費の一部を負担してくれる貸主は意外と多くいます。業態に関わらず、今後も物件を借りた人が使用できる汎用性の高いものであればあるほど、可能性は高まります。防災・防犯設備、電気ガスの容量増設等の内装工事が良い例です。駄目元で提案してみるといいでしょう。それが不可能な場合は、撤退時にスケルトン状態に戻さなくても良いと条件をつけてもらえれば、それら設備の原状回復にかかる費用を抑えることができます。
解約条件の交渉
物件の契約には初期費用がかかるのと同じで、解約時にも出費があることを忘れてはいけません。目先の出費だけではなく、解約時にかかる費用まで、その物件に対しての「総支払額」を計算しておくことが重要です。
解約時の3大確認ポイント
1.予告期間
◯ヶ月までに書面による通知を行う…等
2.保証金・敷金の償却
賃料◯ヶ月分、1年毎に◯%…等
3.違約金
賃料◯ヶ月分…等
契約期間によりますが、毎月の賃料を下げる交渉より、解約条件について交渉する方が得する場合があります。解約に至るには経営不振だけでなく、店舗が軌道にのり、さらに大きな店舗へと移る場合もあります。契約書の内容は絶対と思いがちですが、契約当日までは交渉の余地は充分残されています。契約前に解約の事などと思わず、解約時の条件はしっかり確認し、退去時のトラブルを回避しておきましょう。
まとめ
交渉とは貸主と借主、お互いに条件を出し合い、話し合ってその条件をクリアにしていくものです。ただただ賃料を下げて欲しい等とお願いするのではなく、譲れない条件についてはしっかりとした主張を持って、誠意ある態度で交渉に臨みましょう。そこから両者が心から満足できるゴールを目指します。「この人に借りて欲しい」と思ってもらえる結果になれば、お互いの利得だけでなく、その後の店舗の運営にもいい影響が出ることでしょう。
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