お店を独立して開業を目指す方に向けて、開業前に準備すべきことを一から順を追ってご説明します。どのような流れで、どのようなことにどれくらいの時間を要するのか、確認しておきましょう。在職中から出来ることもたくさんありますので、リストアップするなどして準備に取り掛かるといいでしょう。初めてのことですので、効率良く作業が進められるようポイントを整理しておきましょう。
1. 計画・立案
誰もがたくさんの夢を乗せて、独立・開業されることと思います。実際に順調な経営を続けられる方もおられますし、そうでない場合も多々あります。思い描いていたものに少しでも近く、利益もあげられるような経営環境にするためのポイントをご紹介します。とりあえずの最初の一歩と思われがちですが、実は最後の最後までこの作業が核となります。アイデアや考えをしっかり固めて取り組みましょう。
コンセプトメイキング
コンセプトとは、基本となる発想や観点、全体につらぬかれた核となる考えのことを言います。独立・開業するにあたり、どのようなお店にしたいのかイメージをしっかり形にしていきましょう。いつ、どこで、誰が、誰に、何を、何のために、どうやって、いくらでアクションを起こすのか。出店エリアやターゲット層に合わせ、価格帯や売り方を定めます。店舗を運営していくうえで、非常に重要な作業となります。出来上がったコンセプトは主軸、核となり、それに基づいて様々なことが決定されます。内装デザインはもちろん、サービス内容や商品の種類などの他に、お客さまにどのような時間を提供できるかもコンセプト次第です。大切にしたいものはなにか考えて、整理しておきましょう。
事業計画
コンセプトが固まったら、事業計画書として書面に仕上げていきましょう。事業計画書とは、これから始める事業にかかる資金を調達するための大事な書類とあります。融資の際などに用いられます。会社の概要、経営者の考え方、事業の進め方、採算の取り方など、計画がどのようにして実現する可能性があるのか成長具合も盛り込んでいきます。客観的に、ハッキリと、簡潔にをモットーにまとめてみましょう。なかでも売り上げ予測は重要なポイントとなります。売り上げ目標の達成のための具体的な数字を出して、より現実味のある内容にしていきましょう。事業計画書をまとめることで、問題点や矛盾点を見つけることができます。事業開始後は事業計画書をもとに軌道修正しながら進めていきます。
資金調達
独立・開業をする際に自己資金だけでまかなえない場合、金融機関による融資を受けることがあります。融資を受けるには、審査があり、無理のない安全で現実的な計画が必要になります。事業計画書から必要な資金を算出し、資金調達のプランを練ります。融資を受けない場合も、独立・開業資金には大きなお金がかかりますので、しっかりと内容を精査しておきましょう。
2. 物件選び
計画書や資金調達のめどが立ったら、いよいよ物件選びが始まります。自店にあった物件を探す前に、出店したいエリア選びをしておきましょう。どんな素晴らしいお店であれ、立地条件が悪ければ、お客さまは呼び込めません。業績も伸び悩んでしまいます。出店エリアは間違えることのないよう、リサーチは入念にしておきましょう。
現地調査
出店したいエリアにどのような建物や施設、店舗があるのか調べます。業種に関わらず人気店や競合店などがある場合、そちらもしっかり分析し、出店すべきエリアかどうか判断しましょう。来て欲しいお客さまがいるエリアには同業種の競合店があるはずです。どのように差別化をはかるか対策が必要です。また、どのような人が生活しているのかも観察しておきましょう。朝・昼・夜と時間帯によっても人の流れは変化します。1日を通して営業時間内の様子を見るのもポイントです。オフィス街などウィークデイと休日でガラッと雰囲気が変わるエリアもありますので、注意が必要です。
物件内覧
現地調査に合わせてピックアップしている物件がある場合、同時に内覧を始めておきましょう。内覧ポイントは業種によって異なりますが、飲食店やクリニックなどは設備工事に多くの費用がかかります。工事に制約のある物件は少なくないので、必ずオーナー様へ確認しながら内覧しましょう。可能であれば専門業者を同行して内覧すると、不明な点も早い段階で解消されるでしょう。いずれにせよ、店舗として稼動させるのに適当かの判断が重要です。開業後を想定したシュミレーションをしておきましょう。使い勝手の良い空間であることがポイントです。
3. 商品と仕入れ
商品がないと商売は成り立ちません。どのような品がどれくらい必要なのか、商品構成を決めます。利益を上げるためにも、強固な仕入れルートを確立しましょう。
現地調査
お店の顔でもある商品選びはセンスが問われます。まずはコンセプトに応じて商品選びをします。ターゲットを見極めて、価格帯をしぼりこみます。次に、どのようにして商品の魅力を十分に発揮できるかを考えます。例えばアパレルを扱うお店ならば、ハイブランドなのかファストファッションなのか。ハイブランドであれば高級感を前面に押し出したディスプレイ、ファストファッションならばスピード感あるテンポの良い空間づくり(=回転率を上げる)を行うなど、ターゲットに合わせた工夫が必要になります。
仕入れルート
商売をするうえで、安定した仕入れルートを確立することは簡単ではありません。また、同じ商品であっても、仕入先によって全く異なることもあります。商品の質は仕入れ先によって決まるといっても過言ではありません。独立・開業する多くの場合、一から新規開拓をしていくことになりますから、入念なリサーチやアプローチが必要になります。双方が安全で安定した取引きを継続できるwin-winの関係を目指しましょう。
4. 内装デザイン
念願の自分のお店を持つわけですから、内装デザインにはこだわりを持つ人がほとんどです。費用面でも内装デザインに基づいてデザインされます。見た目にも失敗は許されませんから、慎重に計画しましょう。
デザイン
店舗デザインの設計は設計会社に依頼するのが一般的です。設計会社は店舗のデザイン案から図面作成、工事の際は立会い、不備がないか確認作業も行います。この作業は設計監理と言い、工事中の施工会社による違法建築や手抜き工事を防止する役割があります。工事が始まるとプロの領域が増えますが、設計前の段階ではしっかりと提案をしておきましょう。参考資料としてイメージに近い店舗の画像などを準備しておくといいでしょう。しっかり予算を決め、コンセプトに沿ったデザインになるよう話し合いましょう。
施工
施工会社や設計会社による紹介が一般的ですが、余裕があれば、複数の会社から見積もりを取って費用や内容を比較してみましょう。比較することで市場の適正価格が分かりますし、納得感も得られます。ただし、見積もり内容は専門的な言葉も含まれ、素人目には分かりにくい部分もありますので、設計会社の方などと一緒に確認することをお勧めします。その上で、依頼する施工会社を選ぶと良いでしょう。
5. 直前準備
何事もスタートダッシュが肝心です。オープン後にトラブルを起こさないよう、工事期間中にも出来ることはしておきましょう。
販促活動
オープン時にしっかりとお客さまを呼び込むには、事前のアプローチが必須です。昨今はインターネットを通じての口コミやSNSなどお客さまから発信されることも多々ありますが、様々な集客手段を使ってお客さまを獲得しましょう。ホームページを基盤としてブログやSNSでお店の状況をアピールしましょう。チラシや新聞の折り込み広告などはエリアは限られますが、不特定多数の人にアプローチできます。継続してお付き合いのあるお客さまなら、DMなどでクーポンやキャンペーンの告知をするのも効果があります。お店のアピールポイントをどういう媒体で紹介するのが最適か考えてみましょう。オープンに向けて余裕を持ったスケジュールで進めていきましょう。
人材選び
必要に応じて、オープン時に一緒に働くスタッフの募集を行います。一般的なのは求人雑誌や求人サイトに記載する方法です。既存の店舗とは違い、独立・開業時のオープニングスタッフですから、ある程度の経験者や社員の見込みがある人の採用を目指して募集をかけます。オープン時のスタッフの対応の良し悪しで、お店の評判は決まります。万が一のトラブルへの対応などを見据え、しっかりと受け答えのできることも採用のポイントになります。採用後はオープンに向けての研修期間を設けます。2週間程度をめどに行いましょう。
シュミレーション
独立・開業は全てがゼロから始まります。ただでさえ混乱しがちな現場が予想されますから、スタッフの気持ちや行動を同じ方向に向かせておく必要があります。オープン前よりもオープン後はさらに厳しくなることでしょう。お客さまへの対応はもちろんですが、スタッフ同士が高め合える指標があると良いでしょう。そして、業務の流れを何度もシュミレーションしてみましょう。反復することで体が反応するだけでなく、疑問点などが出てくることもあります。その都度、話し合い、解決することでスタッフ間の連携もできてくるでしょう。
6. まとめ
自分のお店を持つ夢を現実にされた方はたくさんの努力をなさってきたと思います。しかし、独立・開業を希望する多くの人が一生に一度のこととして、入念な準備をし、よりよい店舗にしていきましょう。