どの業界でも、一から新しい店舗を立ち上げるのはとても大変なことです。中でも美容業界は多様化し、美容室に至っては全国的にみても競争率の激しいものとなっています。ヘアスタイリストの腕や信頼はもちろんですが、店舗自体にも魅力がなくては新しいお客様は呼び込めません。美容室経営に必要な基本知識、個性を引き出す内装デザインのポイントをご紹介します。
- 美容室の現状
- 内装工事の流れ
- 立地環境5大ポイント
- 内装デザインの考え方
- 居抜物件の注意点
- 内装工事費の目安
- まとめ
・ターゲット
・インパクト
・お客さま目線と動線
・安心感と清潔感
・立地のよさや内装のデザインに惑わされていないか
・物件が売り出された理由を理解しているか
1. 美容室の現状
年々美容業界は多様化し、なかでも美容室は競争率の激しい業界とお伝えましたが、どのような現状なのか簡単に解説します。美容室は、コンビニの4倍にあたる23万店舗が全国に点在していると言われています。大半の人が数年間の見習い時代を経て独立し、自分の店をもつ傾向にあります。市場的に見ても、ブランド力のある大規模企業が少ないのはそのためでしょう。小規模事業者が増え、競争をより激しくしている要因とも言えます。他店との違いをいかに魅力的に表現できるかが、成功の鍵となります。人気エリアでは美容室が密集していたり、郊外では厳しい環境を強いられることもあります。個性を打ち出す内装デザインの重要性は言うまでもありません。そんな問題を解決するノウハウをご紹介します。
2. 内装工事の流れ
開業準備
1. 資金管理
開業するにあたり、資金調達はとても大きなポイントとなります。まず予算があり、その中で細かく振り分けていくことになるのですが、開業後はおもわぬ出費が続いたりすることも少なくありません。開業後の運転資金の確保には余裕を持っておきましょう。その上で内装デザインにかけられる予算を決めるようにします。必ず上限を決めてやりくりするようにしましょう。
2. コンセプト決定
どのようなお店にしたいかアイデアが浮かんだら、全て書き出してみましょう。曖昧な表現ではなく、細かく自分の言葉で書き出します。欲張りすぎずお客様もことを考えてしっかり絞り込み、コンセプトとします。今後はそのコンセプトをもとに進めていきます。他店との違いをセールスポイントにしましょう。
店舗デザイン・設計
1. 設計業者選び
コンセプトが固まったら、設計業者にデザインを依頼し形にしていきます。イメージをいかに再現してもらえるかも重要ですが、作業環境を整えることを最優先にしましょう。設備や工事、什器等、美容室ならではの知識を持った専門家が必要です。必ず美容室の内装、設計を手がけたことがある業者に依頼するようにしましょう。お知り合いからのご紹介やインターネット検索、マッチングサイトなど、選び方は様々です。自分に合った方法で選定しましょう。
2. デザイン打ち合わせ
設計業者選びが決定したら、コンセプトをもとに内装デザインに取りかかりましょう。理想とするイメージを画像や雑誌から準備しておき、デザイナーさんとすり合わせをします。ニュアンスが難しい場合は、やりたくないイメージも併せて準備しておくといいかもしれません。シャンプー台などは数の他に、品番まで伝えておくとスムーズに話し合いが進みます。希望は必ず伝えておきましょう。
3. デザイン決定
設計業者のプレゼンでデザインパースや平面図、展開図が提案されます。それらの資料をたたき台にして、より細かく要望を出します。だだし、要望が増えるとコストもどんどん跳ね上がっていきます。コンセプトをもとに優先順位を考えて、友好的に話し合いを重ねていきましょう。トラブルを避けるためにも、疑問に思ったことはその場で解決するように努めましょう。
内装工事
1. 施工業者選び
内装のデザイン設計を施工業者に依頼します。デザイン業者から紹介されることが一般的ですが、複数の業者に見積もりを取ることが望ましいでしょう。適正価格がわかります。
2. 工事の注意点
工事が始まったら、実際に足を運んで確認するようにしましょう。素材や色など細かく確認しましょう。期間は、30坪程度であれば2~3週間で完了します。オーダーメイドの割合が多かったり、工事に制限がある場合はさらに1~2週間長くなると考えていいでしょう。
3. 立地環境5大ポイント
店舗の出店に際し、立地環境は重要項目の一つです。商圏調査と言って、そのエリアの市場動向をリサーチすることで出店計画の判断をします。小売業やサービス行において重要なマーケティング要素です。「駅近」「繁華街」「出店人気エリア」など、キーワードだけで立地環境を決定してしまうのは絶対にやめましょう。自店のコンセプトやイメージに見合いそうなおおまかな候補をあげてから、商圏調査にもとづいて絞り込みをします。結果を踏まえてから最終判断をしましょう。店舗の半径500m圏内において、以下の5つのポイントをチェックしてみてください。
商圏調査5大ポイント
1. 居住人口・世帯数・世帯人数
人口等はそのエリアの自治体で正確な数字がわかります。どのような人が住み、生活しているのかは、実際に目で見て確認します。時間帯によっても変わりますので、じっくり調査が必要となるでしょう。
2. 交通量・歩行者通行量
オフィス街や学生街では、毎日決まった人の流れができていると言えます。休みの日に閑散としたイメージがあります。逆に商店街などは一部の人を除き、毎日不特定多数の人が足を運びます。サービス業向きと言えるでしょう。人の流れが多い、少ないだけではなく、そのエリアの特性を知る必要があります。
3. 誘導施設の有無
誘導施設とは学校や病院、駅やショッピングセンターなど多くの人が利用する施設のことを指します。大きな人の流れを作り出すものですから、現存するものだけではなく、今後の開発予定や都市計画にも注視しましょう。自治体で確認できます。
4. 人の行動目的
そのエリアに何をしに来ているのか、どこへ向かう人が多いのかを確認し、目的を調査します。通勤、通学のためなのか、商業施設を利用しようとしているのかなどもポイントです。
5. 動線
店舗が立つ道はどのような目的で利用されることが多いのでしょうか。通学路や駅に抜ける道、商業施設沿いのほか、街灯や人通りが多く、明るく安全な道などの理由もあるでしょう。色々な視点から見てみましょう。
4. 内装デザインの考え方
ターゲット
自店のコンセプトが、そのエリアのカラーに合っているかを踏まえた上で出店を決めましょう。同じエリアの競合店はどのような雰囲気なのかもチェックします。しかし、似たような雰囲気では商売は成り立ちませんから、他店との違いをうまく表現する必要があります。その多くを担うのが内装デザインです。強いこだわりがあるのであれば、そのコンセプトに合ったターゲットがいるエリアを選定するのも、成功への近道かもしれません。
インパクト
近年ではインターネットや雑誌などのメディアを利用して、お店選びをするのが一般的です。新規のお客様にはインパクトが必要です。お店の写真を使い、いかに「おしゃれ」や「かわいい」を表現するかがポイントとなります。作り込んだ内装デザインではなくても、ポイントとしてこだわりを持たせれば、来て欲しいお客様の獲得が期待できます。来店してがっかりさせないよう、また、リピーターを増やすためにも等身大の表現で勝負しましょう。
お客さま目線と動線
ユニバーサルデザイン、バリアフリー。そんな言葉に当てはまらないでも、お客様がいらした際に心地よく居られる空間であることを心がけましょう。ゆとりをもたせた設計であったり、個室空間をつくったり、あったらいいなを考えてみましょう。また、作業動線、営業効率を考慮したレイアウトであることも必要不可欠です。実際にシュミレーションをして、お互いが無理なく利用できる環境に整えましょう。
安心感と清潔感
一般的に美容室での滞在時間は、女性で約1時間半、男性で約45分と言われています。その間にシャンプー、カット、パーマ、カラーリングと様々な施術がなされていきます。美容室が緊張する、苦手だという人も少なくありません。そんな悩みを少しでも解決できるよう、デザイン面でも工夫してみましょう。スキルや価格だけでなく、長時間いても苦痛を感じさせない空間づくりをしましょう。リピーターの獲得にもつながります。
さらに清潔であることも重要です。汚いところに人は近寄りません。毎日の掃除は当たり前ですが、忙しい時でも簡単なお手入れで済むよう、汚れにくい素材を選びましょう。設備機器もメンテナンスしやすいものにしておくと便利です。
5. 居抜物件の注意点
初期費用が抑えられる、短期間で開店できる、前店のお客様を取り込めるなどのメリットから、居抜き物件を利用する場合があります。飲食店に多い傾向で、美容室で利用し成功を治めた人は少ないでしょう。前店が美容室以外の場合はさらに難しくなります。メリットよりデメリットの方が多いのが現実です。必要ならば以下のポイントに注意して、慎重に物件選びをしましょう。
立地のよさや内装のデザインに惑わされていないか
好条件の物件に出会うと、この物件を活かしてみたいと思うかもしれません。しかし美容室に必要な設備は特殊で、他業種からの居抜きではほとんど使い物にならないでしょう。使用できない設備は解体工事が必要となります。工事費用を抑えるには美容室の居抜きか、解体を含むスケルトン物件で考えた方がよいでしょう。
物件が売り出された理由を理解しているか
自店の理想に近いコンセプトの物件に出会った場合、内装の改装費用を最低限に抑えることができるかもしれません。しかし、また似たようなお店がオープンしてもお客様を呼び込めるでしょうか。前店がなぜ撤退せざるを得なくなったのか考えてみましょう。譲渡の理由がオーナーの引退等であればラッキーですが、内装がまだ新しい場合などは経営状態に問題があった可能性が高いので、エリアの見直しも検討してみましょう。
6. 内装工事費の目安
初期費用が抑えられる、短期間で開店できる、前店のお客様を取り込めるなどのメリットから、居抜き物件を利用する場合があります。飲食店に多い傾向で、美容室で利用し成功を治めた人は少ないでしょう。前店が美容室以外の場合はさらに難しくなります。メリットよりデメリットの方が多いのが現実です。必要ならば以下のポイントに注意して、慎重に物件選びをしましょう。
美容室内装の坪単価
美容室の内装工事にかかる費用は、一般的に坪単価50万円前後と言われています。他業種に比べ、設備工事が多いのが特徴です。それに比例し、坪単価も高騰します。とくにシャンプー台は高度な施工技術が必要で、配管工事による床上げ、高額なボイラー工事も発生します。必要不可欠な設備工事費を計算したうえで、その他の内装にかかる工事費用を算出します。素材や仕様で費用をコントロールしながら、追加工事が発生しないようにしっかり計画しましょう。立地条件や規制がある場合は、坪単価も前後しますので確認しておきましょう。ハイクラスのお客様をターゲットとする場合は、客単価も上げて採算を合わせましょう。
居抜き物件の修繕費
初期費用が抑えられると思いがちな居抜き物件でも、経営期間が長い場合にはなにかしらのメンテナンスが必要となってきます。クロスの張り替えは勿論、水回りの工事になると100万円単位で費用が発生します。美容室からの居抜きでシャンプー台などが譲渡されていても、使い物にならなければ意味がありません。リース契約の場合もあるので、リース料金や使用可能期間なども細かく確認しておく必要があります。新規で購入した方がコストを抑えられる可能性も高く、ケースに応じた予算を立てておくと良いでしょう。
運転資金
どのような物件にしても、開業に際して開店後の運転資金の確保は必至です。準備段階から多くの費用を出しても、オープンまではあっという間に感じますが、スタートはこれからです。お客様を呼び込み、経営を軌道に乗せるまでは長い道のりとなるでしょう。その間も家賃や経費などの運営費用や人件費、生活費が必要です。月々の支払いは容易に計算できるので、その分はしっかり確保しておきましょう。
7. まとめ
美容室経営は個人事業者が多く、その分多様化するため他店との差別化が難しく競争が激化しています。いかに魅力的なお店を作り上げるかがポイントです。物件選びから、個性を生かした内装デザインまで自らのコンセプトに落とし込んで作り上げていきましょう。お客様の目線も忘れないよう、心がけましょう。