数ある店舗の中から、この店舗に入りたいとお客さまに選んでいただくにはどうしたらいいでしょうか。飲食店やアパレルと違って、必要にかられて訪れる事が大半の病院やクリニックはどうでしょう。今回は医院やクリニックを開業するにあたってのポイントをご紹介します。
1. 好感度がカギを握る内装デザイン
どのような業種でもそうですが、来て欲しいお客さまを呼び込めるような内装デザインにする必要があります。医院やクリニックでは、患者さまがお客さまとなります。まずは不信感、不安感を拭えるようなデザインであることがポイントです。特にエントランスなどは出入りしやすい雰囲気、造りでお客さまをお迎えしましょう。
次にターゲット層に応じた切り口、見せ方を考えてみましょう。オフィス街であれば、働く人をターゲットにシンプルで無駄のない凛としたデザインが好まれるでしょう。地域に根ざしたアットホームな医院であれば、幅広い世代に受け入れられるようナチュラルで温かみのあるデザインもいいでしょう。ポップな色使いでユーモラスな工夫が施され、一見、医院やクリニックには見えないようなデザインは子供達が好み、安心して来られる印象を与えることができるでしょう。ユニバーサルデザインやバリアフリーなどを備えるのも魅了的です。
開業するドクターの思いによって、いかなるデザインも考えられます。コンセプトに応じ、時代やニーズを踏まえながらデザインを踏襲しましょう。呼び込むお客さまへの好感度がリピーターの獲得につながります。
2. 心地よい空間づくりと動線
視覚的に魅力的な内装デザインができても、居心地の悪さが際立っては元も子もありません。滞在時間が決して短いとはいえない病院やクリニックでは致命的と言えるでしょう。
医院やクリニックには待合室があります。診察室よりも長い時間を過ごすことが考えられる一番重要な場所です。待ち時間を少しでも短く感じてもらえるように、本や雑誌、パンフレットなどを準備するのは当たり前ですが、椅子やソファ選びもお客さま目線で行います。座り心地の良さはもちろんですが、他のお客さまとの間隔であったり、照明の明るさや色もポイントです。あまり狭い待合室も考えものですし、照明も清潔感を出そうと白すぎたり明るすぎたりすると、心理的にも落ち着かない空間となってしまいますので注意しましょう。
子供向けによくあるのがキッズスペースです。子連れのお客さまには力強い味方となりますが、幅広い世代のお客さまが来られる医院では配慮が必要です。音の出る機械類やオモチャは音量に気をつけたり、出ないものを準備するようにしましょう。
また、スタッフの動線もしっかり考えておきます。いくら落ち着いた空間ができても、慌ただしくスタッフが行き来しては落ち着けるはずがありません。スタッフも同じです。お客さまの前をウロウロするような設計では仕事もままなりません。プライバシーが重要視される現場ですので、目線の高さなどもチェックしておきましょう。
3. ブランド力の強化
それぞれの医院やクリニックにはコンセプトがあり、他医院と差別化したい特徴、ポイントがあります。それらを内装デザインに落とし込み、表現します。特徴をしっかりと打ち出すことでブランド力が高まります。ブランド力が高まると、集客率も上がります。さらにお客さま満足度を上げると、リピーターが増え安定した経営が期待できます。
簡単に医院やクリニックの情報をネット検索できる世の中ですので、お客さまも「どこでもいい、どこも同じ」という考えは減ってきているように思います。来て欲しいお客さまを獲得できるよう、ブランド力を高めていきましょう。スタッフの質もブランド力の一つです。それらは来院したお客さまの口コミとなって発信されますので、対応にばらつきがあるようであれば簡単なマニュアルを作るのもいいでしょう。
4. 開院までの流れ
開院までは長いようであっという間に過ぎていくことと思います。具体的にはコンセプトに見合う物件の決定から始まり、コンセプトをもとにした設計プランの作成、デザイン案の決定となります。
そのあとは適正価格などを見極めるためにも複数の業者に見積もりをとることをお勧めします。その後契約し、工事が開始され、施工、引き渡しとなります。最初の物件選びから引き渡しまで、トータルでサポートしてくれる設計業者もあります。予算やスケジュールなども把握しやすく、その都度その都度一から話をする必要がないので、認識やイメージのズレが生じにくいという利点があります。時間的に余裕がない場合にも安心でしょう。
もちろんデザインと工事・施工は別々の業者に依頼することも可能ですし、工事・施工現場が遠隔地の場合は必然的にそうなる可能性も出てきます。いずれの場合もお互いに真摯な態度を取って、信頼関係を築けるように心がけましょう。
5. まとめ
必要にかられて行く場所というものは、自宅や会社の近所であることがほとんどです。利便性が一番ではありますが、一歩足を踏み入れて苦手な空間には再来の可能性は低いと言えます。きっかけは偶然であっても、またここに来ようと思える空間であることが理想です。医院やクリニックのお客さまは患者さまです。心から安心して通院していただくことができるような空間づくりを目指しましょう。